中学受験算数の良問・難問・基本問題

プロ家庭教師が中学入試の算数の問題とその解法を紹介していきます。

灘中2019年(面積ー★★★★★★)

【灘中学 2019年度 1日目】

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~概要~

2019年の灘中の算数は史上最高レベルの難しさでした。

特に1日目は、合格者平均点が50点/100点満点という最狂レベルです。

本問は完全に捨て問で、実戦では解ける必要はありません。

見るからに難しそうですので、多くの受験生が短時間で捨てることを決断できたことでしょう。

ただ、本問は、本校の過去問の応用問題であるというポイントがあるので取り上げてみました。

 

~解説~

どこから手を付ければよいのか、という感じですが、とりあえず分かるものは全て図に書き込んでいきましょう。

円は中心に関して対称なので、

FC=FD=5cm

GB=GA=7cm

などと求めることができますね。

 

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通常、弧の絡む図形の面積を求めるときは、中心と結ぶ線を引いておうぎ形を作るのが鉄則です。

例えば本問の右上の斜線部分の面積は、おうぎ形OADの面積から△OADの面積を引いて求めるのが普通です。

しかし本問は、それではどうにもなりません。

 

現状、求めることができる面積としては△AEDと△BECがありますね。

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つまり、上図の赤色で囲まれた部分の面積を求めることができれば、そこから2つの三角形の面積を引いた残りが問われている斜線部分の面積の和ということです。

しかし、これはかなり強引な解説で、実戦でそんな発想に至るわけがないと思われるでしょう。

ここで、灘中の昔の問題を1問ご紹介します。

 

【灘中学 2004年度 1日目】

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全く同じ形ですね。条件として数値が提示されている場所もほとんど同じです。

つまり本問は、この15年前の自校の問題をリニューアル(難化)した問題だったのです。

それではこの問題は、灘中に合格したいなら、灘中の過去問を15年分ぐらい解いておけという学校からのメッセージなのでしょうか?

それは分かりませんが、冒頭の概要でも述べた通り、本問が解けなくても合否には全く影響しない問題であることだけは確かです。

 

それでは解説に戻りましょう。

まずは本問の前に、2004年の問題からです。

この問題では、補助線の引き方がポイントになります。

知識として知っていないとなかなか思い浮かびにくい補助線ですが、下図の赤線の様に引いてみましょう。

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理屈としては、円の対称性を利用するための補助線です。

つまり、円は中心(直径)に関して対称なので、上下と左右に同じ形を作るために引いたということです。

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この様に円を9つに切り分けることで、上図の様に同じ面積の部分がいくつかできました。

円の面積は785㎠と与えられているので、

◎◎◎◎+☆☆+△△+▢=785㎠

また、真ん中の▢は長方形なので、

▢=10cm×18cm=180㎠

よって、

◎◎◎◎+☆☆+△△=785㎠ー180㎠=605㎠

問われている青線で囲まれた部分の面積は◎◎+☆+△なので、これのちょうど半分です。よって、

605㎠÷2=302.5㎠

 

本問(2019年)も同じ様に考えましょう。

補助線は、下図の赤線の様に引けばよいですね。

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すると、同じ形がいくつか出来るので、それぞれの面積は下図の様におけます。

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よって、青線部分の面積(=◎◎☆△)は、円の面積(=◎◎◎◎☆☆△△▢)から中央の長方形の面積(=▢)を引いた面積の半分と分かります。

長方形の面積は、

▢=10cm×2cm=20㎠

と求められます。

しかし、2004年の問題では 明示されていた円の面積が本問では不明です。

よって、これも自力で求めなくてはなりません。ここぞとばかりに難化させてきますね。 

とはいえ、半径が与えられていない円の面積の求め方は受験算数では必須項目です。

具体的には、下図の円の面積を求めるという問題です。

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三平方の定理』を使える子は、△FODが直角三角形なので、

OF×OF+DF×DF=OD×OD

よって、

5×5+5×5=▢×▢

▢×▢=50

円の面積=▢×▢×3.14=50×3.14=157㎠

と求めることができますね。

 

三平方の定理を使わずに解くときは、次のように考えます。

△ODFと△OCFは直角二等辺三角形なので、

∠DOF=45°

∠COF=45°

よって、

∠COD=45°+45°=90°

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よって、上図のような正方形HDOCを作ることができます。

このとき、この正方形HDOCの面積は、ひし形の面積の公式を使って、

正方形HDOC=10cm×10cm÷2=50㎠

と求めることができます。

ところで、この正方形HDOCは1辺の長さが▢cmなので、正方形の面積の公式で求めるならば、

正方形HDOC=▢cm×▢cm

となりますね。

よって、

▢×▢=50

です。この▢は、正方形の1辺でもありますが、円の半径でもありますね。よって、

円の面積は=▢×▢×3.14=50×3.14=157㎠

となります。

 

これでようやく、青線部分の面積(=◎◎☆△)を求める準備が出来ました。

◎◎☆△=(◎◎◎◎☆☆△△▢ー▢)÷2

    =(157㎠ー20㎠)÷2

    =68.5㎠

 

最後に、△AEDと△BECの面積を引くのを忘れてはいけませんね。

△AED=6cm×2cm÷2=6㎠

△BEC=4cm×12cm÷2=24㎠

よって、

68.5㎠ー(6㎠+24㎠)=38.5㎠

 

 

重要度【☆☆☆☆☆☆】

難易度【★★★★★★】

 

※2004年度1日目[13]

重要度【★★☆☆☆☆】

難易度【★★★★☆☆】

 

 

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